夏の白身魚

No.134 / 2011年6月11日配信

 出世できない我が身を顧みて「仕方がない、見る目のない上司が多すぎる」などと、密かに憤ってみてもはじまりません。この夏はそんなことより、ひとつ、美味しい「出世魚」でも食べながら、心を美味しい満足感で満たしたいものです。「セイゴ」「フッコ」「スズキ」と成長に合わせて名前を変える「鱸(すずき)」の美味しい季節がやってきました。

 鱸はクセのない白身魚でフランス料理や中華料理にもよく登場します。もちろん、加熱したりソースと一緒に食べたりするのも美味しいのですが、新鮮なものはやっぱり刺身でいただくのが「わたし流」。魚の貴公子とも呼ばれることもある美しい鱸の刺身は鯛のように美味しいし、鯛の刺身だとごまかしても、おそらく初心者にはわからないでしょう。私の若い頃がそうでしたから。

 「大将、その白身を切ってくれる?」と、やがて義理の父親となるその人は料理屋のカウンターで刺身を注文しました。「お嬢さんをください」と家人(妻)の父親へ挨拶に行った後、その父親馴染みの店に私を誘ってくれたのです。魚ではサバやアジの大衆魚が好きなんです、と言った緊張気味の私に、「ほう、それはいいな。でもこの魚も夏には美味しいぞ」とニッコリ。

 思わず「この鯛、美味しいですね」と口走りました。父親は微笑みながら「君も出世して立派になれるように前祝いだ」といいながら杯を上げました。「この魚はそんな出世魚だよ」「はぁ???」伝承かめ壷造り・本格芋焼酎「幸蔵」を愛するようになった今は、同じ白身の「真鯛」と「鱸」でも、その違いが解ります。出世はしなくても、舌の成長だけはできたようです、お父さん。

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