夏のかおり
No.33 / 2008年8月21日配信
8月の終盤の記憶は、翳りの色をのぞかせる太陽の光。すでに原色の季節はピークを越え、涼風が熱帯夜の喘ぎをさらっていく。そんな季節の変わり目を感じさせるような晩夏のイメージも、近年はすっかり変わり果ててしまったようです。猛暑の太平洋高気圧の影響が長く続く状況が多くなりました。
それでも夏至から日数を重ねる毎に、昼の長さは規則正しく短くなり、夕空も知らないうちに茜色の準備をこつこつと始めています。そんな夏の終わりの夕暮れ時間、ふと、この夏の出来事が脳裏をかすめます。それは過ぎ行く夏の想い出を心のページに整理しなさいと、神様がプレゼントしてくれた時間なのでしょう。今年の夏は何があったのだろう。ワクワクすることってあったかしら? 残念ながら答えはNOです。二十歳の頃とは違って、魅惑的な想い出に恵まれない最近の夏。今年は結局キャンプも中止になったし、これではいかん!
こうやって、結局この時期、私は栄螺(さざえ)を買いに出かけることになるのです。日曜の夕方、窓を開け放って網の上で栄螺のつぼ焼きを始めると、いつもは知らんふりの娘がニコニコしながら寄ってきます。「私も一杯もらおうかしら」と連れ合いの声。伝承かめ壷造り・本格芋焼酎「幸蔵」をロックでぐびぐびやりながら、味わう旬の栄螺。部屋中に漂う夏(磯)のかおりが幸せな時間を運んできます。手軽すぎる夏の想い出づくりではありますが、もう止められない習慣になってしまったようです。