桜 鯛
No.54 / 2009年3月21日配信
季節が桜の淡いピンク色に染まる頃、産卵を控えた真鯛も身体をさらに美しく桜色に染めるといわれます。その艶やかで豪勢な魚体は縁起がいいとされ、重宝されてきました。結婚披露宴のおめでたい料理はもちろん、尾頭付きの鯛は開幕戦に臨むプロ野球選手の食卓を飾ったりもするそうです。
特にこの時期の真鯛は桜鯛と呼ばれ、冬を越え産卵を控えた真鯛は脂が乗って美味しいものです。特に潮の流れが速い海で育った真鯛は、身が締まって無敵の旨さだとか。新鮮で身がぷりぷりしているものは、やはり刺身で食べるのが一番です。皮と身との境目の旨い部分も味わうには、皮に熱湯を掛けた霜降り状態で食べるのがおすすめです。
「骨は硬くて、アジやサンマのように炙っても食べられないけど、こうやって塩だけで美味しい吸い物になるのよ」そういえば、初めて釣った真鯛を実家に持っていったことがありました。「捨てるところなんてあるわけがない」と母は大切そうに真鯛を捌き、料理してくれたことを思い出します。
「お父さんは魚食べるのが上手ね」と娘が真鯛の塩焼きをつつきながら言いました。誉められることが少ない父親に向かって、たまには嬉しいことを言ってくれるものです、ふふっ。平静を保ちながら「当たり前だろ」とさりげなく伝承かめ壷造り本格米焼酎「昔気質」をカップに注ぎました。幼い頃に母から教えられた魚の食べ方が身に付いています。亡き母にありがとうと、心の中でつぶやいてみました。