柱のキズ

No.58 / 2009年5月1日配信

 黒ずんだ古い柱の前で、幼い兄弟4人揃って撮影してもらったことを憶えています。端午の節句に親戚の叔父さんが写してくれたものでしたが、その写真が今はどこにあるのかわかりません。みんなグイと胸を反り返らせ上を向いていたので、やけに鼻の穴が目立つ写真でした。

 こどもの日を迎えるたびに『柱のきずはおととしの 五月五日の背くらべ 粽(ちまき)たべたべ兄さんが 計ってくれた背のたけ』と、子供の頃に良く聞いた童謡『背(せい)くらべ』を思いだします。有名な『こいのぼり』より先にメロディーが浮かぶのが、なぜか不思議です。

 柱に肥後守(ひごのかみ)で、童謡のようにキズを付けて計った身長。毎年必ず数センチは伸びるのに、どうしても兄に追いつけない背丈のもどかしさ。我が家には立派なこいのぼりも兜の置物もなかったけれど、大切な成長を記録した古くて黒い大きな柱が私たち兄弟をいつも見つめてくれていました。

 新聞紙でつくった兜、菖蒲を浮かべた銭湯など、こどもの日の楽しかった想い出も朧げながら残っています。「中華ちまきが急に食べたくなったなぁ」と我が連れ合いにわがままなリクエストをしました。今夜は伝承かめ壷造り本格米焼酎「昔気質」にしよう。年に一度くらいは、子供だった頃の記憶と戯れるのも悪くはありません。 

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