花火の夜
No.67 / 2009年8月1日配信
16世紀、イギリスでは王室行事として花火大会がテムズ川で盛大に催されていたそうです。日本では隅田川花火大会(東京都)が古くから有名で、その歴史は江戸時代に遡ります。花火大会は四季の中では夏が多いのですが、花火が川開きに使われていたことに由来するのだそうです。花火大会は私の中でも「夏の風物詩」として刷り込まれ、夏の記憶の中では特に大きな存在感を誇っています。
少し照れくさそうに別々に固まって歩く二つのグループ。十代の頃、男子と女子のグループ一緒に、打ち上げ花火見物に行ったことがあります。女の娘たちは申し合わせたように浴衣姿です。日没前の風が運んでくる、彼女達からの石鹸の匂いに、ドキドキさせられた経験は今でも鮮明です。
草がまばらな地面に座り込み、かき氷を手にしながら見上げる夜空。ドンと胸に響く破裂音。打ち上げ花火が鮮やかな菊の大輪を描き、夜空を照らしては消えていきます。クライマックスの光の乱舞が、隣の少女の顔を一段と明るく照らし出します。十代の夏、花火の夜。私は最後まで花火だけを見ているふりをしていました。
今でも花火大会が近づくと、けっこういい歳をした大人なのに、ワクワクしてきます。伝承かめ壷造り・本格芋焼酎「幸蔵」を注いだカップを傾けると、去年の花火大会が思い出されます。花火が終わった後の帰り道で、妻と手を繋いで歩いたことを。何年ぶりだったでしょうか、少し勇気が要りました。