みょうが
No.68 / 2009年8月11日配信
素麺や蕎麦の薬味として、また天ぷらや酢の物として夏の食卓を飾るみょうが。独特の香りや辛みが暑い季節に美味しい清涼感を運んでくれます。その香りの成分はαーピネンといって、食欲増進や集中力を増す作用を持つということです。やっぱり、この季節には欠かせない香味野菜というわけですね。
子供の頃に「みょうがを食べると物忘れがひどくなるのよ」と、よく母から聞かされました。何故なのか、その理由までは教えてくれなかったので、本当のところは母も知らなかったのではないでしょうか。しかし、子供の嗅覚にはその不思議な強い香りが神秘的に感じられ、私には物忘れ話もいっそう真実味を帯びて聞こえたものでした。
宿屋を営む夫婦が大切そうな荷物を持つ泊まり客から、その荷物を奪い取ろうと悪い策略を巡らせる民話があります。出発時、荷物を宿に置き忘れさせようと、前夜の食卓で「みょうがづくし」の料理を出すようにしました。こんなみょうがの料理ばかリじゃたまらない、こんな宿には長居は出来ないと、翌朝早くにその客は宿を出てしまいました。なんとこの話には、宿賃を払い忘れて出発したという、宿の主人達には残念な落ちがついています。
みょうがを薄くスライスしたものに鰹節がふわっと乗っています。醤油を少し注した後、私は「財布を置き忘れたりしないからね」と、女将さんが作ったお通しをつつきながら言いました。伝承かめ壷造り・本格芋焼酎「幸蔵」のロックを私に差し出しながら、女将さんは「どうせ大したものなど、入っていないくせに」とにやにや。すべてはお見通しです。