銀杏(いちょう)の種子
No.76 / 2009年11月1日配信
黄金色に輝く銀杏の紅葉は沈んだ気持ちもパッと明るくしてくれます。葉っぱが「黄色」に変化するのに「紅葉」なのが面白いですね。真っ赤に染まる郊外の山々を眺めると、最後の命を燃やしているようで、静けさの中に何か懸命なものを感じます。しかし、アヒルの足のような銀杏の黄色い葉っぱには悲壮感などはなく、逆に明るい笑顔を返してくれているようです。
東京の明治神宮外苑や大阪の御堂筋の銀杏並木が有名です。全国的には数えきれないほどの銀杏の紅葉名所があるのでしょうね。そういえば、かつて通った小学校の通学路にも銀杏の老木がありました。中学校の近くには銀杏の並木がありました。黄色に染まる美しい風景の中には、沢山の想い出が詰まっています。
小さい私たちは黄色の銀杏の実が道ばたで悪臭を放ち始めるのを待っていました。その中の種子(ギンナン)が目当てでした。臭い果肉をとり除いた後に現れるのが堅い殻に包まれたギンナンです。おばあさんは手伝ってくれたお礼にと、煎ったばかりのギンナンを一粒だけくれました。「子供だから、ひとつだけね」と言葉を添えて。透き通った緑色のギンナンはかすかに苦くて、ほんのり甘く、弾力のある噛みごたえでした。
大人の今、銀杏の葉が色づき始める頃になると、ギンナンを無性に食べたくなります。可愛がってくれたおばあさんのことを思ったとたん、伝承かめ壷造り本格米焼酎「昔気質」が雰囲気かもしれないな、と独り言がポロリ。先週末に直売所で買っておいたギンナンを10数個取り出して、塩と一緒に封筒に入れ、レンジに放り込みました。