湯豆腐

No.85 / 2010年2月1日配信

 寒さのピーク・大寒を通り過ぎたとはいえ、一年の中でもやっぱり寒さの厳しい時期です。こんな時期はなんといっても温まる鍋料理が一番。野菜もたくさん食べれるので栄養もバランスもGOODです。我が家でも、晩秋からこれまでずっと懲りずに「鍋料理」を食べ続けてきました。飽きないようにと、今年も一昨年のキムチ鍋に続き、特にきりたんぽ風の鍋やトマトベースの洋風すき焼き鍋などの様々な鍋に挑戦しています。

 先日、家人たちは私を残して旅行に出かけてしまい、土曜の夜を独りで過ごすはめになりました。一応(?)私の夕食の心配をしながら出かける家族に「たまには料理するのもいいものさ。昔はバイトでよく包丁を握ったものだ」と、強がりの言葉。さて、日が傾き始めた独りの夕方。晩飯をどうするかという現実問題が浮上してきます。多少、料理の心得はあるものの、妙に心細くなっていく情けない自分がいました。

 簡単だし、やっぱり冬だから鍋にしようかな。自分の好きな具材を思いっきり楽しめるチャンスなのに、どういうわけか独りの食卓を思うと気分はしんみり。独りの鍋料理を想像しても、全く盛り上がれません。な~に、一晩だけだから、と気力を振り絞って近所のスーパーへ買い出しに。日配品コーナーに並んでいる豆腐に呼び止められたような気がしました。一丁48円の特売品の豆腐に。

 熱量の小さい電熱器の上にはアルミの一人用ラーメン鍋。豆腐と白菜だけの水炊きが脳裏をかすめます。20歳の冬。学生アパートでは、湯豆腐ばかりの時期がありました。次のバイト代が入るまでは、鶏の水炊きも出来ません。真っ白な豆腐を見ながら、独りで夢を追いかけていた空腹の日々。北風が電線を鳴らす厳しい寒さに背中を丸めた夜。よくも孤独に耐えられたものです。シンプルな鍋料理「湯豆腐」が古い記憶を紡ぎ出します。久しぶりの独りの夜。伝承かめ壷造り・本格芋焼酎「幸蔵」が「傍にある温かさ」をしみじみと感じた夜でした。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です