もう一つの合格
No.89 / 2010年3月11日配信
「ひょっとすれば、次回の車検まではもたないかもしれませんよ、このタイヤは。細かいひび割れが見られるので、破裂するような危険性はありませんが、そろそろ交換準備をした方がいいのでは」とディーラーの担当者が、車検の結果報告を私に告げました。車は本当にいろいろとお金を食うものです。小遣いが減らされる中での、タイヤ交換は結構堪えます。
そんなこともあって、久しぶりに愛車のタイヤの細部を見ていると、確かに細かいひび割れは認められます。「う~ん。まだ、しばらくはもつんじゃないか?」とブツブツ。タイヤを撫でていると、昔、自動車学校に通っていた時のことが思い出されます。私の運動神経が鈍いのもあり、仮免許試験を受けるまでに補習を受けるなど、結構時間がかかりました。
追加の補習は派生するし、無理して教習代を払ってくれている親の負担を考えると、堪らない気持ちになったものです。仮免許の試験、路上教習をくぐり抜け、やっとのことで実技試験にたどり着けたと思ったら、またまた試練の不合格。信号機のない交差点近くの道を歩いている人が、交差点手前で止まりかけようとしました。そのままスピードを緩めずに通り抜けた私の点数は75点で、合格まで5点足りませんでした。また、追加の講習。かさむ費用に、その試験時、交差点で止まりかけようとした人を憎みました。それさえなかったら。
「そんなことを言うもんじゃない。お前が悪い。そりゃお金は掛かるが、命の大切さを学んだと思ったら、その費用なんか安いもんだ」と、私への父の言葉を憶えています。初めて運転免許証を手にして以来、長い歳月が過ぎましたが、幸いなことに大きな事故は起こしていません。命のことを考えると、やっぱりタイヤ交換しようかな。カップの中の伝承かめ壷造り・本格芋焼酎「幸蔵」が、大きく頷いたような気がしました。「うん、合格だよ」って。