黒 船
No.95 / 2010年5月11日配信
我が家人達は、日曜夜のNHKの大河ドラマ「龍馬伝」に夢中です。おそらく、ストーリーよりも男前の主人公に惹かれて「ハマっている」のではないかと 考えられます。「君たちのように、物語より主人公ばかりに目がいくような見方はイカンね。邪道だもんね、それは」。「お父さんこそ、ひょっとしたら嫉妬しているんじゃない?」と娘がドキリとしそうな言葉を返してきます。
そういう私も先日は、龍馬の初恋役の平井加尾のあまりの切なさに涙がぽろり。京都で過ごした龍馬との短い時間、そして別離の表情。胸に熱くこみ上げてくるものがあります。照れくさいので、涙も隠れ涼子ファンということも家人達に覚られたくはありません。すぐに 「モヤがかかっているような空間の演出、光と陰の使い方に工夫を凝らした撮影は努力賞だな」と、無理矢理、話を映像のほうに振り向けました。
ドラマの中で龍馬が江戸で剣術の修行をしている時に黒船がやってきました。「太平の眠りをさます上喜撰、たった四はいで夜も寝られず」という狂歌で皮肉られた江戸幕府の狼狽ぶり。黒船が最初に現れた翌年の1854年に下田で、鎖国政策に終止符を打つことになりますが、妻と娘をヒートアップさせながら、物語はこのまま一気に幕末の舞台へと進展していきそうです。
「会社に入って、改革を言い続けてきた若い頃の俺は、よく『龍馬』みたいと言われたものだ。今も金融危機というアメリカ発の黒船と戦っているし」と、娘に言えば、「え~、ウソ~」。「腹も昔はこんなもんじゃなかったしな」と言って、腹をポコポコ叩くと、「キモッ」と一言返ってきました。そんな家庭環境にめげずに、現代の龍馬は静かに平井加尾を想いながら、今夜もグラスの伝承かめ壷造り・本格芋焼酎「幸蔵」をぐいっとあおるのです。