若布の味噌汁

No.96 / 2010年5月21日配信

 先頃、世界的な話題になった「クロマグロ」はもちろん、イカだって一番の消費国はこの日本です。私たちは海の幸が大好きな民族だし、海藻だって一番多く食べるのは日本人です。若布は春から初夏にかけての季節が特に美味しいと言われますが、私もこの時期が訪れる度に条件反射的にその若布の味噌汁を飲みたくなります。

 入社間もない頃、休日前に先輩に連れられて、記憶がなくなるほど飲み歩いた後、そのまま新婚である先輩の社宅に転がり込んだことがありました。抱いていた甘っちょろい理想と現実のギャップに心を重くしていた入社後の日々。5月病だったのかもしれません。そんな時、先輩はだんだん元気をなくしていく私を見かねて、夜の歓楽街に引っ張りだしてくれたのです。

 翌朝、先輩宅で目を覚ました私はひどい二日酔いで、気分は最悪。そんな状況下でも、朝ご飯は食べた方が良い、と奥さんは勧めてくれました。ご飯はともかく、若布が入った味噌汁だけはなんとか飲めそうです。アツアツの味噌汁は、貼り付いたすべての嫌なものを流してくれるように胃の中に落ち、じわりと身体全体にしみ渡っていきました。こんなに美味しい味噌汁は久しぶりでした。

 「お酒を飲んだ後は、しじみの味噌汁が良いって言うけど、ごめんなさいね」と先輩の奥さんは申し訳なさそうです。私はお礼を言った後、すぐに社宅を後にしましたが、若さも手伝い、あっという間に元気を取り戻すことができました。5月病の部下を助ける先輩のエピソードが、私に「わかめの味噌汁」を思い起こさせる初夏。伝承かめ壷造り・本格芋焼酎「幸蔵」とともに「若布の味噌汁」は私にとっての温かくて大切な宝物です。

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