太陽の味

No.98 / 2010年6月11日配信

 休日の昼、久しぶりに家にいる娘が「お昼は私が作ってあげる」と、親子関係に前向きな発言です。スワッ、小遣いの無心か?はたまた、無理難題か?「お父さん、トマト味は嫌いじゃなかったよね」と、身構える私に「味」の確認。「あぁ、トマトを使ったスパゲティも大好きだし、トマトだったら、何でも大丈夫だ!」

 テーブルに並んでいるのは「トマトソース味」のラーメンでした。そして、そのラーメン丼からは湯気が立っていません。「なんだ、熱いやつじゃないのか?」と訝りながら冷たい麺をすすると、濃厚なトマトの味が口中に広がります。「けっこう、いけるじゃないか!」と言うと、「でしょ」と得意顔の鼻がさらに高くなっています。「フフッ、太陽の味でしょ!」

 総務省が発表している全国家計支出額のデータによれば、野菜の項目ではダントツの一位がトマトです。有名なトマトケチャップメーカーの調査でも、トマト調味料の伸びが顕著。今年は、素麺のタレにトマト味が売られています。そういえばスーパーでも「調理用(加熱用)のトマト」が普通のトマトの横に並んでいました。トマトラーメンのチェーン店も好調だそうです。

 新婚当時、家人が作ってくれた「トマト(生食用)と卵の炒め合わせ」に納得できなかった私も、加熱トマトの旨さを認めざるを得なくなりました。そういえば、今年の一月にはトマト味の「すき焼き」も経験済みです。しかし、私は心の中で抵抗を続けます。少年時代、暑い夏の昼下がりに井戸水で冷やした真っ赤な完熟トマトの味。あれこそが本当の太陽の味だと。グラスに注いだ伝承かめ壷造り・本格芋焼酎「幸蔵」が静かに頷く6月です。

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