アルハンブラ宮殿
No.139 / 2011年8月1日配信
スペインの首都マドリッドは現地の発音では「マドリッ」に聞こえます。暑い夏、その「マドリッ」のアトーチャ駅からアルハンブラ宮殿のあるグラナダまで列車で向かいました。全てがキリスト教国といってもおかしくないヨーロッパで、1492年に滅亡するまでイスラム教国としてグラナダは栄えたそうです。その象徴がアルハンブラ宮殿で、栄華を今に伝える鮮麗な建造物です。
私は宮殿内で、我を忘れてカメラのシャッターを切り続けました。それまで片手に持っていたヨーロッパ旅行用ガイドブック(日本語で書かれている)を宮殿内のどこかに置き忘れたことも知らずに。出口に近づくころに左手が軽いことに気づいたのです。青くなりました。日本語しかしゃべれないバックパッカーの一人旅には「超」大切なものです。
走って、来た道を戻り、ガイドブックを探すものの見つかりません。門衛の太ったおじさんに「ア、ア、アイ ロスト マイ ツ、ツーリングガイドブック イン アルハンブラ」と息を切らして訴えました。30分以上も一緒に探してくれたけど、結局見つかりません。礼を言った後、絶望感にとらわれてへなへなと芝生に座り込む始末。そこに二人組の女子高生。
「タバコくれない?」スペイン北部のビルバオから来たそうで、心ここにあらずの拙い英会話。たくさん持ち歩いていた5円玉から1枚をあげると、可愛いジャスミンの押し花をくれました。元気づけてくれた女子高校生と門衛のおじさん、ありがとう。あれから四半世紀は過ぎたけど、私はノーガイドブックで欧州を歩き、そして今ここにいます。ときどき、伝承かめ壷造り・本格芋焼酎『幸蔵』が懐かしい旅の想い出を連れ戻してくれます。心が優しくなれる時間です。