あらかぶもん

No.160 / 2012年3月1日配信

 活き締めした新鮮な刺身魚で一杯やりたくてたまらない気分が訪れます。春のシーズンを待ちきれない私達は、早春の海(地上では春でも、海中はまだ冬状態)にいそいそと釣り竿を持って出かけます。しかし、膨らみ過ぎた期待に反して、この時期に釣り上げて持ち帰れるのは、残念ながら大きな魚じゃありません。

 釣りの出発前夜、「明日の夜は新鮮な刺身だから、チューブに入ってるやつじゃなくて、生のわさびを忘れずに買っといてくれ」と家人に伝えます。永年私の声を聞いている家人は「はいはい、あらかぶ(カサゴ)ですね」と応えます。あらかぶは口こそ大きいものの、波止や磯の浅場にいるものは身体が小さく、やけに口ばかりが目立つという魚です。

 家人の言葉に私はムッとします。「あらかぶ」は「口先ばかりで結果を出せない者」を意味するからです。「今年こそ」の願いもむなしく、大物を釣り上げる夢はいまだに実現できていないので、私はやっぱり口先だけの「あらかぶもん(者)」なのでしょう。悔しいけれど、返す言葉が見つかりません。

 豊かな美味しさを提供してくれる小さな海の幸。この時期の10数センチのあらかぶは本当に貴重です。スリおろしたわさびで頂くあらかぶの刺身。そして味噌汁で味わう温かいあらかぶ。伝承かめ壷造り・本格芋焼酎『幸蔵』との相性もばっちりだから、これ以上何も望むことはありません。う~ん、しかし、一度くらいは大物を釣らせて欲しいなぁ、ねえ神様。

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