清 明
No.163 / 2012年4月1日配信
漢字のイメージでもそのすがすがしさが好ましい「清明(せいめい)」。二十四節気では「春分」の次に来る気持ちの良い頃のことです。樹々の花や草花が咲き乱れる美しい時節で、ちょうどその頃、桜前線も美しいピンクの衣をまとい、南北に長い日本を北上中。今年は4月5日がその「清明」の瞬間に当たるそうです。
小学低学年の頃、担任の女の先生に「清明」を構成している漢字の「清い」と「明るく」を何回もくり返し教わった記憶があります。先生は「正しく」「ハキハキ」とね、と言葉を追加した後、絶対に嘘はついてはいけませんよ、「嘘だけは絶対に」と念を押しました。幼い私は、先生の目を見つめ「はい」と大きな声で応えました。
5年生になったある日の下校時間、裏側の校門近くの大木の影から、大きな上級生を中心にした3人組がドドッと校門を駆け抜けていきました。その上級生は校門を抜けるとき私をジロッと見ました。一度、仲間になれと凄まれたことのある生徒です。すぐに男の先生が駆け寄って来て「こちらに誰か走って来なかったか?」と訊かれました。
慌てた私は瞬間的に「いいえ」と反応してしまいました。翌日の授業の前に先生が、下級生が殴られた話をして、注意を促しました。私はその先生の顔をまともに見れません。昨日、嘘をついたからです。伝承かめ壷造り・本格芋焼酎『幸蔵』のカップを傾ける夜、校門でついた小さな嘘がいまだに胸をチクッと刺します。清明が「正しくあれ」と私に呼びかけています。