バラの香り
No.169 / 2012年6月1日配信
場所や品種によって開花時期は異なるのでしょうが、5月の中旬から6月の中旬くらいが「春バラ」が楽しめる時期だと思います。私の住む地域の植物園も郊外のバラ園にも多くの人が訪れ、賑わっていました。定番の真っ赤なバラから淡いピンク色のラ・フランスまで色とりどり。バラ園の小径を歩く人は皆、笑顔が絶えません。
家人もバラ大好き人間で、ベランダには十数種のバラの花を育ててニコニコ。さらに、昨年からはバラの香りのするハンドクリームなるものを買い込み、その香りを手に付けて外出しています。いくらバラ好きとはいえ、なんでそこまで頑張るのか、私にはわかりません。「香りは文化なのよ」と家人は言いきります。
私のバラの香りは小学校時代の裕福だった友達の想い出。梅雨の少し前、紅いレンガに包まれた瀟洒な家の庭には、真っ赤なバラが咲き誇っていました。一緒に登校する私が待つ門の外まで、友達はそのバラの香りの中から現れます。一方、私の家の6月のイメージといえば、匂いのこもるトイレの窓からのぞく庭の雨に、なぜか悲し気に揺れる紫陽花の花。友人宅とえらく違います。
当時からバラの花が咲く庭の優雅さにあこがれました。本当は子供心に、バラの香りの向こうに覗く「お金に不自由しない文化的な生活」が羨ましかったのです。とすれば、家人が言うとおり、やはり「香りは文化」なのかもしれません。それは伝承かめ壷造り・本格芋焼酎『幸蔵』の優しい芋の香りに通じます。6月の夜、家人と違ってバラより芋。私は今夜も「私の文化の香り」に浸ります。