アドリア海の後悔

No.174 / 2012年7月21日配信

 今でもそうだと思いますが、イタリア半島の南東側にあるブリンディッシという港町からギリシャのパトラスまでのフェリーはユーレイルパス(好きなだけ乗れるヨーロッパの鉄道パス)が利用できました。私はその日の夕暮れ近く、フェリー乗車の手続きを終え、ひとりで岸壁のカモメを眺めていました。すると、そこには元気のない日本人青年がひとり座り込んでいます。

 久しぶりの日本語が使えると思い、声をかけてみました。同じくギリシャに渡るというその青年は学生で、イタリアのローマで親切を装った詐欺に出会い、高額のお金を支払うはめになったと、暗い声で話してくれました。もう旅費も残り少なくなってしまったそうで「ハンカチなんか拾わなければ良かった」と虚ろな表情を浮かべています。

 『ハンカチ拾ってくれてありがとう。お礼にそこのバルで何かおごるよ」と、店に入って食事が済む頃にその人の良さそうな男性は姿を消し、その代わりにイカツイ店員が高額の請求書を持って現れたとのこと。「後で考えれば、前を歩いている人がいきなりハンカチだけをそっと落とすなんて、変ではありますよね」と悔しそうです。

 私は乗船後、「一杯やろう」とその学生を誘いました。バックパックの中からイタリアで買っておいた赤ワインとサンドイッチ、缶詰等を取り出して、できるだけ陽気に飲み食いをしました。27才だった私の夏は少しは人のお役に立てたかな?その場面、ワインじゃなくて伝承かめ壷造り・本格芋焼酎『幸蔵』だったら、もっと元気にしてあげれたかもしれないと、今の私ならそう思ったりします。

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