キャベツの千切り

No.198 / 2013年3月21日配信

 野菜売り場では、冬の間はもつ鍋でおおいにお世話になった冬キャベツも、生食が美味しい「春キャベツ」に変わっています。水分が多くて軟らかいし、甘みもしっかりしていて美味しいので、大歓迎です。トンカツに添えるキャベツの千切りに、ソースやマヨネーズをかけて食べるのが好きなので、私は典型的な「昔の日本人」の舌の持ち主でしょう。

 私とキャベツはけっこう縁深いものがあります。赤貧時代は貴重な食料だったし、レストランのバイト時代には「キャベツ」が包丁の使いかたを学ばせてくれました。「恐れることはあらへん。大丈夫やさかい、ほら」とその店の料理人は青龍刀のようにデカイ包丁を私に渡しました。刃が恐ろし気にギラギラと光っています。

 左手の人差し指の側面にそって、きちんと包丁を立てて上下させれば手を切ることはないから、と料理人はキャベツを刻んでみせてくれました。私は真剣に取り組み、やがてその千切りの基本をマスターしました。しかし、半年後にそれまでの切り傷とは比べ物にならないような傷を負い、私は指を真っ赤に染めてしまいました。

 事故は気のゆるみが招くものです。その時にキャベツは「油断大敵」という言葉も同時に教えてくれました。「食事では、まず野菜から食べるようにしたら良いんだって。ダイエットにもキャベツが良いそうよ」と家人が私に話しかけました。私は伝承かめ壷造り・本格芋焼酎『幸蔵』を片手にしながら「もちろん、キャベツって凄いんだ」と応えると、自然に人差し指の傷跡に目が行きました。

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