魚肉ソーセージ

No.200 / 2013年4月11日配信

 家庭を持って以来、ほとんど口にすることのなかった「魚肉ソーセージ」を近くのスーパーから買ってきてしまいました。友人と私は釣りに出かける際には、未明のコンビニで弁当を買い込みます。友人は魚肉ソーセージも買っていて、その赤い袋から取り出した淡い桃色のソーセージを、釣り場でじつにウマそうに食べていました。きっとその記憶が買わせたのでしょう。

 私の中学時代は給食がなく、毎日、弁当を持参していました。我が家の弁当のおかずの記憶は、塩味の薄っぺらな玉子焼き、魚肉ソーセージ、コンブの佃煮、梅干し、そして塩鯨です。魚肉ソーセージの?油煮付けがおかずで、その汁がにじんだ包みを解く日は精神的な苦痛を伴いました。隣の生徒の弁当は豪華な厚焼き玉子、ソーセージは豚肉の高級ウインナーを焼いたものだったからです。

 もちろん、当時大衆食の魚肉ソーセージは「身近なウマいもの」として私も大好きでした。しかし、隣の生徒は焼いた高級ウインナーです。中学一年生だった私の「豊かさへの憧れ」は、?油で煮て黒ずんだ、冷えた魚肉ソーセージに非難の声を上げさせました。ついに、厳しい家計をやりくりしていた母の華やかでない「弁当のおかず」に文句を言ってしまったのです。

 家人が「この魚肉ソーセージ、どうやって食べるの?」と私に尋ねます。私は少し思案した後、「?油で煮付けてくれ」と頼みました。「天ぷら」にでもした方が美味しいんじゃない?と家人は不思議そうに頭を傾げました。伝承かめ壷造り・本格芋焼酎『幸蔵』を飲みながら、魚肉ソーセージをつまんでいると、母の記憶が甦ってきます。ごめん、母さん、文句言ったりして。

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