ナイスな旅
No.249 / 2014年8月21日配信
私の熱くて混乱した欧州の旅は続いていました。旅の途中、スペイン・グラナダのアルハンブラ宮殿でガイドブック「地球の歩き方」を紛失してしまい、大きなショックを受けました。この先はオレンジ色のトーマスクックの時刻表だけがたよりになる心細い旅行になりそうでした。しかも、スペイン滞在に時間を費やし過ぎて、この先が急ぎ足の旅となるのは必至の状態です。
バルセロナを発つとすぐにフランス国境を迎え、その日(8月28日)うちにニースまで進み、一泊する予定です。急ぎ足が要求される中でも、どうしても海辺のバカンス地であるカンヌかニースにだけは寄りたかったのです。ビキニのおねえさん達と一緒に地中海の風を浴びたいと……。しかし、列車が大幅に遅れてしまい、ニース到着時にはインフォメーションも両替コーナーもすでに店じまい。
暗がりの駅前のベンチで財布を調べると、残金60フランしかなく、おまけにお腹は空いてきます。人間ってものは不思議なもので、お腹が空いてくると不安が増幅するように出来ているのです。よし、次に進もう。私は一泊の海辺のバカンスを断念し、リュックに残っていた食べ残しのアップルパイとぬるいオレンジジュースでお腹を慰め、次の夜行の列車に飛び乗りました。
列車内でイタリアのミラノまでの行程を確認するために、鉄道の時刻表をめくりました。すると皮肉にも、バカンスが叶わなかったニースの地名が目に飛び込んできます。私はハッとしました。ニースは「Nice」というスペルではありませんか。願いが叶わなかったのに「ナイスか」と、思わず苦笑い。伝承かめ壷造り・本格芋焼酎『幸蔵』は苦笑いの過去に、よく連れていってくれます。