兄の玉子焼き
No.253 / 2014年10月1日配信
秋、10月。運動に最適なシーズンです。しかし、この時期になっても近所の小学校からは、運動会の練習の声が聞こえてきません。子供の頃の記憶を辿ってみると、春は小運動会といってスケールの小さな運動会があり、秋は広がる青空の下で大々的に開催される「秋期大運動会」でした。どうして2回も?と思う人もいるのではないでしょうか。
私の小学生時代は、今のようにビデオなどが存在するわけもなく、カメラだって貴重な時代でした。我が子や可愛い孫の活躍は自分の目で確かめるしかありません。娯楽も少ない時代だったので、運送会は秋祭りとともに地域の一大行事でした。私は家族や親戚の期待感が嫌で、特に短距離走のスタートラインに並ぶ時の緊張感は大嫌いでした。
嫌いだと思ったら、なぜか運にも見放されるものです。スタート直後にあせって転んで脳震とう。情けなくも、すぐに救護テントに運ばれるしまつです。昼食時にはやっと父兄席に帰ることが出来、この日のためのご馳走にありつけました。「玉子焼き、お前にやるよ」と、痛手を被った弟の為に、兄は精一杯の気を遣ってくれました。母が、笑いを噛み殺していました。
塩味だけの薄っぺらな玉子焼きでした。夏休みに転校していった友人のおうちで食べた、あの厚巻の甘い玉子焼きとは違います。素朴でシンプルだった味だけに、そのぶん美味しさは強く記憶に残っています。そんな運動会の想い出はほろ苦くも、ほっと心を暖めてくれます。玉子焼きをつつきながらやる伝承かめ壷造り・本格芋焼酎『幸蔵』のお湯割りがうれしい季節です。