父のこだわり

No.277 / 2015年6月1日配信

 「あの~、失礼なことお聞きしますが、夕食の刺身に付いてくるワサビは生ワサビでしょうか。あの根っこをちゃんとすりおろしたヤツ」と、私はその有名温泉旅館の電話受付の女性に尋ねました。「はい、大丈夫ですよ」と明るい返事が返ってきたので、私はホッとしたことを思い出します。

 家人の発案で、兄妹みんなで「父の日」に温泉旅行をプレゼントしようということになりました。ちょうど良い機会だから、一緒に兄妹家族全員も出掛けようということに。めったにない合同旅行だからだからと、少し贅沢して黒川温泉の人気旅館に予約を入れたのでした。久しぶりの大所帯での旅行にみんなワクワクしていました。

 義父は善人でしたが、かなりの酒好きでした。ふだんはあまり細かいことなど言わなかったものの、酒の席にかかわることになると別でした。温泉旅行のプランを話した次の日に「まさか、練りワサビが出て来るような旅館じゃないだろうな」と家人に電話してきたそうです。「父の日感謝」の旅行です。義父の要望には応えなくてはなりません。さっそく、旅館への確認電話となったわけです。

 「あなたと一緒ね、そういうところ」と家人が私をチクリ。「当たり前だろ、好きなものにはこだわるもんだよ、男は」「出てくる刺身のことは聞かなくて、ワサビのことにだけしつこくなるって変じゃない?」と家人には納得いかない様子でした。そういえば、伝承かめ壷造り・本格芋焼酎『幸蔵』を置いているかの確認も忘れていたなぁ、と10年以上前の話し。もうすぐ父の日です。

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