朱に交われば
No.289 / 2015年10月1日配信
博多には、博多ならではの美味しいものがたくさんあります。辛子明太子もその中のひとつで、お土産や贈答品として、今や全国区の人気を誇るようになりました。私も辛子明太子に出会う前までは「たらこ」という赤くて塩っぱい魚卵しか知りませんでした。30数年前、その辛子明太子に初めて箸をつけたのは博多の屋台でした。
「俺はべつに、ふくやから金貰っとるわけじゃなかばってん、ふくやの社長の心意気が好きやったけん、この明太子を仕入れとるんよ」と屋台の大将は新社会人の私たちに話しかけます。なんでも、最初に博多式の辛子明太子を考案したのがふくや創業者の「川原俊夫」さんで、彼はあろう事か回りのみんなにも辛子明太子の製法をただで教えたそうです。
川原社長の太っ腹のおかげで、博多に「辛子明太子産業」が大きく育ち、ひとつの食文化として根付きました。私も何度か中元、歳暮の時期にお世話になりましたが、必ず送った相手からは満足感一杯の返答をいただきました。もちろん、辛子明太子はふくやだけではなく、他にもおいしい辛子明太子メーカーはたくさんあり、最近の博多のデパ地下はオシャレな明太子商品で華やかです。
小さい頃に父から「朱に交われば赤くなる」というから、変なヤツと付き合ったらイカンぞ、と釘を刺されたことがありました。川原社長から辛子明太子の製法を聞き、みんなで切磋琢磨して赤い明太子を育てていった博多の地は、まさに良い意味の「朱に交われば、赤くなる」です。よし、明日は伝承かめ壷造り・本格芋焼酎『幸蔵』で辛子明太子だ!