デコレーション・ケーキ
No.296 / 2015年12月11日配信
普段はパン屋なのにクリスマスが近づくと、クリスマスケーキを売り出すパン製造直売店がうちの近所にありました。そのパン屋は、店の屋号だったのか、店においている商品のパンメーカーの名前だったのかハッキリしませんが、とにかく「木村」という名が朧げながら思い浮かびます。小学校からの帰り道、いつも店頭のショーケースを覗いて帰っていました。
そのパン屋の美味しそうなパンやホットドッグは、毎昼の給食で出てくる「硬めのパサついた食パン」と違って、とても魅力的に見えました。店の奥から漂ってくる、パンを焼き上げる匂いも私を虜にしました。店の前を通る時は歩みのスピードがぐっと落ちたものです。さらに、クリスマス前になると、必ず立ち止まっていました。あこがれのケーキが並ぶからです。
同じ小学校に通う友人は、家でママが自家製のデコレーションケーキを焼いてくれるそうです。2学期の終業式が終わると、ケーキを焼く友人宅のことを思い、家路についたものでした。うちはキリスト教じゃないからな。と、ケーキで祝うことには消極的な父親の声は消えないままです。しかしその年、奇跡が。なぜか食卓に小さいながらもデコレーションケーキが。
私と兄は小さな手を叩きながら狂喜しました。母も嬉しそうにその様子を眺めていましたが、「あなたね。毎日、長いこと店の前でケーキを眺めたりしたらダメよ。パン屋のおじさんがこれをって、持って来てくれたじゃないの」と、苦笑い。しかしまあ、大人になってもクセは抜けないものです。今は伝承かめ壷造り・本格芋焼酎『幸蔵』を毎日見ていますが、ちっとも見飽きません。