小暑(しょうしょ)
No.315 / 2016年6月21日配信
梅雨明けが近づき、本格的な暑さが訪れる頃が「小暑」の時期。日本の夏の蒸し暑さにはほとほと閉口してしまいますが、この時期なりの楽しみがそれを救ってくれます。この季節に産卵期を迎える前の「鱧(はも)」は身に脂が乗り、甘くて柔らかくてとても美味しいものです。私は社会人になって初めて鱧を口にしましたが、やっぱりこの季節でした。
お前たちの頑張りに報いなくてはならないと、どういう風の吹き回しか、若い私達を部長が食事に誘ってくれました。京都の夜は蒸し暑く、高瀬川も淀んだ空気に包まれていました。普通は敷居が高い先斗町の料亭に、当時の私と同僚は胸を激しくときめかせながら石畳を歩いたこと思い出します。伝統の京料理に、期待感も膨らむばかりでした。
この時期はやっぱり鱧ですな?、と目の前に出されたのが「鱧の梅肉ソースがけ」でした。野菜炒めやカレーが普段の食事という私は、その梅肉のさっぱりとした味付けと柔らかい湯びき鱧の味に驚き、その旨味の世界に圧倒されました。とてもシンプルな料理なのに深い味わい、匠の精神。鱧の骨切りなるものを、初めて耳にしたのもこの時でした。
鱧を初めて口にした日から幾日も過ぎました。それ以後、各地の「旬」の伝統料理に出会うチャンスにも恵まれました。そんな私に、今残されたものは「旬」を大切に思う心。伝承かめ壷造り・本格芋焼酎「幸蔵」がいつも傍にあるという幸せに恵まれながら、鱧の代わりに穴子ではどうだろうかなどと、さらに楽しみを膨らませています。