木守柿(きもりがき)

No.331 / 2016年12月1日配信

 近所を散策していると民家から覗く柿の木の枝に、赤い柿の実が1個だけ残っていました。来年もしっかりと実ってくれるようにと願って、わざと取り残している「木守柿」かもしれません。または小鳥のために残している、優しさに包まれた1個かもしれません。北風を感じるようになり、風景がモノクロ化していく中で、小枝ごと揺れている赤い柿の実が印象的です。

 幼い頃、通学路のそばに古い柿の木の枝が板塀よりはみ出ている家がありました。友達との下校途中、たくさん実った柿の実を二人でよく見上げたものです。まだ柿は買わなくても、たくさん調達することができた良き(?)時代でしたので、秋の初めともなると、もういけません。なぜかみんな一斉にソワソワし始めるのでした。

 ただ、この柿の木の持ち主は近所でも有名な強面おじさんでした。通学途中に顔を見たこともあったのですが、噂にたがわぬ恐ろしげな顔でした。柿をこそっと拝借しようと思うことなど絶対にありえないし、もし失敗して捕まったらとか考えたくもありません。心は動くものの冒険ができない現実。幼い葛藤に柿の木の下を通る時にはなぜか無言でした。

 そういえばこの家の柿、冬になっても木の枝に1、2個まだ残ったままになっていたことを思い出します。ひょっとして「木守柿」か「小鳥の餌」だったのかもしれません。怖かったけど、実は心根の優しい人だったのかも。「性善説」のようなものが温かく心の中に広がります。さぁ、お湯割の伝承かめ壷造り・本格芋焼酎「幸蔵」の時間です。

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