アゴ出汁
No.339 / 2017年2月21日配信
九州ではトビウオのことを「アゴ」と呼びます。アゴは長崎の平戸などが有名ですが、そのアゴの出汁が空前のブームなのだとか。昨年末、デパ地下で乾物を眺めていたら、係の人が声をかけてきました。このアゴ、立派な大きさでしょ。もうこの値段ではなかなか見つからないかもしれませんよ。いかがですか?と、焼きアゴを15尾、縄で連ねて縛りあげたものを勧められました。
トビウオは水面を滑空したり、とにかく運動が多く、体脂肪が少ない魚として有名です。新鮮なものを刺身で食べたら、さっぱりとした味わいに驚かれるかもしれません。それを焼き上げて乾燥させて、出汁用にしたものが焼きアゴです。博多伝統の雑煮には必ずその焼きアゴで出汁をとったおすましが使われます。黄金色に澄んだ上品な味わいが自慢です。
昔、我が家では味噌汁や煮付け料理の出汁取りに使ったいりこは、そのまま料理に混じったまま食卓に出されていました。私たち子供は好き嫌いに関係なく、必ずそのいりこまでを食べさせられたものです。唯一、正月のお雑煮にはいりこの出汁ガラが入っていなかったので、特別な感じがして嬉しかったのを思い出します。いりこではなく、大きい焼きアゴが出汁に使われていたからです。
地元の市場価格ではなんと近年の7.5倍にまではねあがったとも聞きました。昔からアゴの出汁が大好きだったものにとっては複雑な気分。今もコシが強くない柔らか麺の博多風うどんには専用の粉末アゴ出汁スープを愛用しています。澄んだスープに柚子ごしょうを加えたら、もう最高。伝承かめ壷造り・本格芋焼酎「幸蔵」と同じように、一度ハマったら抜けられない味ですから。