梅干し

No.351 / 2017年6月11日配信

 春にその愛らしい花を咲かす梅の花は、5月には実をつけはじめます。6月、やがて熟れて黄色味を帯びた梅の実が小売店の売り場に並びます。我が家でも家人が若かった頃には挑戦意欲も旺盛で、生協で買ったからと今はやらなくなった「梅干し作り」に精を出していました。途中でカビを生やしたりと、いつもスムーズだったわけではありませんでしたが、私はその手作りの梅干しが大好きでした。

 そんな昔ながらのしょっぱい梅干しが好きなのですが、家族の健康を考えると減塩タイプに文句が言えません。ただ、蜂蜜入りなど、あの妙に甘い梅干しだけには閉口してしまいます。なので、自分用にと近郊の農産物直売店に出向いて「昔仕込みのしょっぱいタイプ」を買い込んでいるのです。我が家の冷蔵庫にはスペース不足にもかかわらず、必ず2種類の塩分濃度の梅干しが並んでいます。

 5月のある休日、家人は女友達で作る山の会の低山登山に出かけました。早朝起床で、ささっとおにぎりを作って出かけていきましたが、私の分も食卓の上に置いてありました。海苔がしっとりとなった手作りおにぎりは私の好物で、そのおにぎりの中にはあの私が買ってきた「しょっぱい梅干し」がタネを抜かれて入っています。シンプルに海苔と梅干しだけのおにぎりもいいものです。

 おそらく自分用には減塩タイプ。亭主用には昔ながらの頑固なしょっぱいタイプ。小さなわがままを許してくれる人がいる。身近すぎていつもは感じない温かいものが心に触れました。手間はそんなに掛からないにしても、忙しい時間のその心遣い。伝承かめ壷造り・本格芋焼酎「幸蔵」で心を洗ったような爽やかな時間が、休日の午前中に訪れるなんて。家人に感謝です。

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