すいかのお化け
No.357 / 2017年8月11日配信
夏にはやっぱり縁側に座って西瓜を食べる風景が似合います。一度、昔を懐かしんでマンションのベランダで西瓜を齧ったことがありましたが、昔のように口に残った種をぴゅっとベランダに飛ばすわけにはいきません。もう庭の端の井戸桶で一玉丸ごと冷やしていた時代とは違います。デザート用の一口サイズにカットされたスイカに頼らなければなりません。
あの頃、母親からは果肉の外側の白い部分は漬物にするから捨てちゃダメよと、よく言われたものです。今だったら食べ残しの部分は削りとったからって、一旦他人が口をつけたものを使ってみんなの漬物にすることには、抵抗があるかもしれません。我が家では翌朝はちょっぴり塩味の西瓜漬物を白ご飯のおかずによくいただいたものです。水分が多くてシャキシャキしていました。
ある日、ハロウィンのかぼちゃならぬ、お化け西瓜を裕福な家庭の友達が作りました。西瓜のてっぺんから西瓜の身をスプーンでくり抜いて皮の部分だけを残してあります。目は三角、口は大きく裂けたようにくり抜いてあります。中心部にはローソク立て。小さい私はうらやましくてたまりません。大切な食料である西瓜を工作に使うことなど、我が家では許されるはずがないからです。
氷で割った伝承かめ壷造り・本格芋焼酎「幸蔵」を飲みながら、あの夏休みを思い出します。近所の墓地でやった「肝試し」で友達のお化け西瓜のデビューはなりませんでした。友達は暗がりで雨上がりの墓石に足を滑らせ、西瓜を落として割ってしまったからです。とても悔しかったのか、スイカのお化けのような顔をして、友達は泣きじゃくりました。