ア・ロング・バケーション

No.388 / 2018年6月21日配信

 ロングバケーションと言えば「ロンバケ」、つまり20年以上前に人気を博したあのテレビドラマを思い出す人が多いかもしれません。月曜日夜はOLが街じゅうから消えるとか、一時期社会現象とまでなりました。しかし、頭に「ア」がついたア・ロング・バケーションはテレビドラマでは無くて、40数年前発売の大滝詠一(亡くなられて、残念)のLPタイトルです。

 入社間もない私たちは年の近い仲間達と、毎日のようにラジカセを持って、昼休みのビルの屋上に集まりました。紫外線も恐れずに、梅雨の雲間から顔を覗かす日差しに、上半身の肌をさらけ出すものもいました。ラジカセからは大瀧詠一のPOPな声で「カナリア諸島にて」の曲が流れ始めます。もうすぐ海のシーズン。ギラつく太陽、白い渚。小麦色のビーナス達。

 まぶたを閉じれば、行ったこともない海辺とやしの木が現れ、すぐに私はどこかの雑誌で見たことのあるような南の島の幻想に包みこまれてしまいます。「夏くらい、どこかにいきたいよね」と友人がポツリとつぶやいたような…。連夜の残業疲れか、横たわった身体からすぐに意識は遠のいていきました。ZZZ。昼休みが終わるまでの、ア・ショート・バケーション。

 私達は学生時代とは違った休暇の少なさに息苦しさを覚えながら、ひたすら大瀧詠一の声とサウンドに夢を求め続けました。「長期の休暇」が望めない代わりに、古びたビルの屋上で日焼けを手に入れていたのです。さあ、伝承かめ壷造り・本格芋焼酎「幸蔵」の時間。今夜はロック氷をたっぷり入れて、炭酸割が良いかも。「ア・ロング・バケーション」バージョンです。

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