カンパチの夏
No.390 / 2018年7月11日配信
刺身好きな私にとって、好きな季節はやっぱり冬であり、寒の頃の脂が乗った魚が一番です。魚は普通、寒い冬を前にたっぷりと餌を摂る秋から冬が「食べごろ」ですね。春、産卵を終えた多くの魚体は脂が抜け、旨味を落として夏を迎えます。今の季節は、味覚的には形勢が不利な状態ですが、そこはそれ、「夏に美味い」魚種も少なからず存在するので、ホッとします。
代表格がカンパチです。カンパチの旬は夏で、仲間のブリとはおいしい時期が大きく異なります。姿・形はブリとよく似ているので、魚に詳しい人でない限り、外見だけではブリとの見分けがつかないのではないでしょうか。まあ、スーパーの売り場では、小さなブロックや刺身姿であっても、パックに名前がシール印字されているので大丈夫ですが。
技術が進んで養殖が盛んになった現在、このカンパチに限らず食べ物の旬が見えにくくなっています。天然物に比べて、養殖物は総じて脂のノリが良く、「ワシは天然ものじゃないと受け付けんもんね」とガンコな主張もよく耳にしますが、特長を理解すれば養殖モノに問題はありません。「天然ものバンザイ!」の気持ちは痛いほどわかりますが、時代が時代です。
カンパチは元来温暖な海域に生息する魚だけに、南国鹿児島が全国一の養殖水揚げを誇ります。「養殖・生き締」で弾力のある歯ごたえ、脂が乗っていて口の中で脂がじわっと溶けていきます。暖かい海出身の魚だけに、宮崎の伝承かめ壷造り・本格芋焼酎「幸蔵」ともよく合います。しかし、この時期だけは刺し身が醤油を弾く「天然カンパチ」の脂の美味しさを楽しみましょう。