目黒の秋刀魚

No.395 / 2018年9月1日配信

 殿様が狩りの途中、目黒という田舎で味わった黒焦げ焼き秋刀魚の味が忘れられずに、家来に秋刀魚を食べたいと所望。家来は秋刀魚の脂が身体に悪いのではないかと心配し脂を落とし、骨が殿様の喉に刺さらないようにと、骨を抜いてバラバラの身にしたり。手が入り過ぎた味に殿様はがっかり。「いったいこの秋刀魚はどこで買って来たのだ?」と尋ねられた。

 「はあ、一流の日本橋魚河岸で求めてまいりました」と答えた家来に、殿様は「そりゃ、いかん。秋刀魚は目黒に限る」と。殿様の世間知らずを風刺した話ですが、家来による忖度も不要でした。焚き火に放り込む(?)農民の粗雑な調理法がいちばんだったのです。落語で語られるこんな良き時代もあったのかと、昨年、不漁の秋刀魚だっただけに笑えない心境。

 近年の不漁や昨年の価格高騰の原因は、秋刀魚が嫌う日本近海の暖水塊の発生(地球温暖化の影響による?)はもちろん、台湾や中国などによる漁獲量の拡大も影響がありそうです。北太平洋漁業委員会の年次会合が7月にあり、漁獲量に上限を定める日本案にも反対する国が出て、秋刀魚好きである庶民の私は秋刀魚資源量の枯渇に向かわないかと心配です。

 秋の味覚の王様はやっぱり秋刀魚。昔、七輪で焼いた焦げ目がたくさんの香ばしい秋刀魚の味が忘れられません。殿様は目黒の秋刀魚が忘れられなかったようですが。じゅうじゅうと焼き音を立てる秋刀魚を皿にとり、カボスをぎゅっと絞って、伝承かめ壷造り・本格芋焼酎「幸蔵」でがぶっとやりたいな。今年は去年より立派な秋刀魚が獲れそうだとか。信じましょう。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です