焼 き 芋
No.439 / 2019年11月21日配信
そういえば、最近「い?しや?き芋?」と大きなマイク音の焼き芋屋さんを見かけなくなりました。いつもこの時期、北風が吹き出す頃に聞こえてくるあのマイクの声が聞こえません。近年は外で遊ぶ子供の声がうるさいから、どうにかならんかというような声が聞こえてくる時代です。あの焼き芋売りの声が「不寛容の時代」の波に飲み込まれてなかったら良いのですが。
私は高校時代に走り幅跳びの着地で腰を痛めました。椎間板ヘルニア、坐骨神経痛というようなありがたくない病名をもらい、毎日放課後の帰宅途中に通院を続けました。初夏に病院に運び込まれ、初冬を迎えても痛みは続き、暗い顔で通院をしていました。毎日の通院で整形外科の専門病院の看護師さんとも冗談を言えるくらいまでに距離は近づいていました。
私が暗い顔をしていたからなのか、看護師さんたちの1人が「あら、焼芋屋さんだわ」と通りに飛び出し、院長先生には内緒よ、と治療を受ける前にみんなで焼き芋を頬張ったこともありました。とにかく長閑な昭和時代の出来事です。女性はみんなさつまいもが好きなんだと決めつけ、社会人になってデートの途中で焼き芋を買って相手に勧めたことがありました。
その女性は「後で食べます」とハンカチに包んでバッグの中に。友人にそのことを話すと「お前はアホか、屁の元なんかをデートの時に。お前はイモやな」。「悪かったなイモで!」と食ってかかったことを思い出します。晩秋の夜。そんな焼き芋のことを思い出しながら、今夜も伝承かめ壷造り・本格芋焼酎「幸蔵」をぐっと一杯。まだ今週も焼き芋屋さんは現れていないようです。