フェリーニ「道」

No.446 / 2020年2月1日配信

 寒い時期は家に篭ることが多くなります。北国の方なら「暖冬傾向だし、九州の寒さなんて、大したことがないのに、何言ってんの?」と、首を傾げるかたもいらっしゃるでしょうが、私にとっては玄界灘の北風も決して甘くはなく、やっぱり冬は寒いです。暖房を入れた部屋でまったりしていると、なぜか過去の「見逃していた名画」のことが気になり始めます。

 オーソン・ウェルズの「市民ケーン」やフェデリコ・フェリーニの「道」など、今でも世界的に評価の高い映画をはじめ、見逃していた作品は少なくありません。偶然にも昨年暮れにフェリーニの「道」をNHKのBSで放映していました。久しぶりのモノクロ映画でしたが、かえって色彩に邪魔をされずに比較的シンプルに主題にたどり着けたような気がします。

 怪力自慢の大道芸人と使用人として買われた、純粋だが少し頭が弱い女の物語です。とある町で、その粗野な大道芸人の男は、興業の旅の途中で見捨てたその女がよくトランペットで吹いていたメロディを耳にします。そのメロディを口ずさんでいた女性から、捨て去った使用人の女のことを聞き出せた男の心に、人間らしい感情が蘇っていく様が描かれていました。

 作曲家ニーノ・ロータが作ったその有名なメロディは「大切な愛」に気づかない人間の愚かさや虚しさを乗せて流れます。そういえば、フィギュアスケーターの高橋大輔選手が過去に試合で使った曲でもありました。寒い夜、暖かい伝承かめ壷造り・本格芋焼酎「幸蔵」をやりながら、次はどんな名作を見てみようかと思いを巡らす幸せな夜。もう、クセになりそうです。

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