散 歩

No.455 / 2020年5月1日配信

 NHK-BSの「世界ふれあい街歩き」が好きです。海外の街を中心に歩きながら、そして現地の住人と目線の高さを同じにして言葉を交わします。石畳の映像が目に入ると、昔歩いたイタリアの古都の狭い石畳の道を思い出します。建物の上層階の窓から「アントニーオ」と子供を呼ぶ声。いつまでも戻ってこない息子が心配になった母親の声なのかもしれません。

 そんなシーンに想像はさらに膨らみ、実体験を超えた架空の物語へと発展していきます。子供を大声で呼んだ母親は焦っています。子供の成績が落ちてきているのをキツく咎めたのが悪かったのでしょう。久しぶりの大声でした。たてつく息子に、ついにカッとして、出してはいけない手まで出してしまいました。ああ、神様。私はなんて馬鹿なことを。

 ゆっくり歩く旅ほど豊かな体験を得ることができるといいます。もちろん、これは旅だけに限らず、近所の散歩コースにだって当てはまります。自宅から1キロメートルくらい先の海岸沿いに「元寇防塁跡」があります。歴史上有名な鎌倉時代の「蒙古襲来」の石積み防御跡です。今は波の音を聞きながら散歩やジョギングする人の憩いの場所になっています。

 この「元寇防塁跡」に自転車でやってきて、住み着いた地域猫に餌やりをしている初老の男性がいます。最近声を掛け合うほどになりましたが、その男性はあの大相撲で横綱になった朝青龍によく似ています。えっ、まさか蒙古の末裔?スポーツクラブが閉鎖され、散歩が増えたおかげでこんな楽しい空想も。散歩の後の伝承かめ壷造り・本格芋焼酎「幸蔵」は美味しいです。

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