武士に二言なし
No.459 / 2020年6月11日配信
無垢な子供時代、良く見ていた時代劇のヒーローたちは嘘をつきませんでした(一部、弱者を思いやっての嘘は除きます)。窮地に陥った者を助けに、困難な中でも約束通り現れたりと、契約書など無い時代なのに、責任感の強いヒーローは私たちの夢を挫くことなく、行動してくれたものです。だから男の子たちはみんな、頼りになるヒーローが大好きでした。
昭和のとある日、どういう魂胆か、父は私に「武士に二言なし」という言葉を授けました。当時の男らしさを象徴する言葉の一つです。時代劇のヒーローたちに憧れていた幼い私は、真剣にその7文字を頭の中で繰り返すようになりました。そしてどういうわけか、その言葉から「みっともないから言い訳もするな」という副次的(?)な意味も読み取ってしまったのです。
教室の掃除時間にチャンバラごっこをした私たちは思い余って、スピーカーを繋ぐ配線を切ってしまいました。先生は怒りました。「お前たちは、先月、もうこんなことはしませんと言ったばかりじゃないか。あの時言った言葉は嘘だったのか」と廊下に水を張ったバケツを持たされ、立たされました。私は先生になんとか言い訳だけはしないようにと口をつぐみました。
しかし今は逆に、言い訳も含めて朝令暮改が当たり前のような世の中。十人いたら百の言葉に注意する必要があります。あのピュアだった子供の頃のような「二言なし」の世界がたまらなく恋しくなります。やっぱり人生には信頼できるヒーローが必要ですね。今、私の心を支えているのは、美味しさに二言のない伝承かめ壷造り・本格芋焼酎「幸蔵」なのですよ。ふふっ。