恩知らずの生き物
No.488 / 2021年4月1日配信
先日NHKのBSプレミアムで見た「まいにち養老先生、ときどきまる(冬編)」では、解剖学者・養老孟司先生の18歳の愛猫「まる」が亡くなる前後の映像もあり、不覚にも大泣きに。一昨年の夏、私は家で飼っていたサバトラの猫を16歳で失くし、今自宅に残る茶トラももうすぐ18歳を迎えます。歩く姿が少しヨタヨタし始めていますし、猫の死には過敏になっているのです。
養老先生の「まる」はスコティッシュフォールドで、垂れた耳や丸顔、そして穏やかな性格で結構淡々とした生活態度が特徴だそうです。晩年を迎えているまるはゆっくりと動き、そして陽だまりのウッドデッキに溶け込むように寝そべっています。鎌倉の自然に囲まれた養老宅の映像には静かな時間が流れ、それはピリピリしたデジタル社会とは一線を画す「贅沢」な世界です。
養老先生によれば「餌をくれ」とは言ってくるが、食べ終わると「ありがとう」の一言も言わずに去っていくし、戸を開けてくれとカリガリ引っ掻くけれど、開けてもらっても「ありがとう」を言ったこともない恩知らずの生き物、だそうです。そんな恩知らずの生き物を眺める目がテレビ画面に優しく映し出されていました。私もそんな恩知らずを飼っているので、わかる気がします。
飼い猫が歳をとっていくと同時に涙腺も脆くなってきたような気がします。いつもは娘に涙を見られないようにと頑張るのですが、今回はティッシュで力一杯鼻をかみました。夕食の時一杯やった、伝承かめ壷造り・本格芋焼酎「幸蔵」で、心もさらに素直に感化されやすくなっていたのでしょう。番組を見終わっても、しばらくはこみ上げてくるものがありました。やれやれ。