ホテル・カリフォルニア

No.498 / 2021年7月11日配信

 13本のギター音を重ねたと言われるアルペジオ奏法の、心を掴んで離さない巧みな音。シンプルに心臓をえぐってくるドラム音。ドン・ヘンリーの叫びに近い掠れたボーカル。失った繁栄への想いを乗せた情念のギターリフ。まだ青かった私の心を掴んで離さなかったのが「ホテル・カリフォルニア」という、当時のビルボード誌全米チャート1位に輝いた懐かしいイーグルスの曲です。

 後になって、スピリッツが退廃したアメリカ西海岸やベトナム戦争敗戦後のことを言ってるのではなどなど、歌詞の表現解釈については色々と賑わすことになりますが、私は歌詞よりそのサウンドの胸をえぐるような鮮やかな音の構成力に参ってしまっていました。カントリーロックバンドから、厚みを増したロックバンドへの変貌を私なりに確認できたのもこの曲だったような気がします。

 ホテル・カリフォルニアがヒットした年の夏、入社まもない職場の深夜残業の机の上。誰かが持ってきたラジカセからそのホテル・カリフォルニアが流れてきていました。音の割には風量が少ないエアコンの生ぬるい風の中、汗が滲む首筋を掻きながら納期が迫ったデザインを仕上げていました。無茶な納期だよな、と同期の友人が苦し紛れに口を開きました。まったくね、まだ新入社員だというのに。

 会社前の路地を勢いよく博多祇園山笠のヤマが駆け抜けていたあの夏の日。そして、イーグルスのあの曲が流れていた夜。かけがえのない思い出の日々です。残念ながら、今年も新型コロナ感染の影響で舁き山行事は断念され、来年まで延期となっています。でも、悔やんでばかりもいられません。そのスピリッツを忘れないように、今夜は氷をたっぷり放り込んだ伝承かめ壷造り・本格芋焼酎「幸蔵」をぐいっと一杯。

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