秋 霖

No.503 / 2021年9月1日配信

 大陸からの冷たい空気と太平洋からの湿った暖かい空気が境をなしてできる「前線」。今年の梅雨前線は5月に現れ、しばらく降った後は「空梅雨」の状態でした。その代わりかどうか、「秋雨前線(?)」がまだ夏の盛り(立秋の翌日)に現れ、とんでもない量の雨を降らせてくれました。最近よく聞くようになった線状降水帯という、連続して現れる雨雲に「これでもか」といじめられました。

 スコールのような激しい降雨、季節を問わない豪雨による災害が恒常化しています。世の中の多くのものが変わりゆく中、変わって欲しくないものの一つに「秋の長雨(秋霖)」があります。私にはその雨は柔らかく、その思い出は優しかったような気がしています。まだ小学低学年の頃の話です。二学期の始業式が始まっても、まだ遊び足りない私たちは帰宅後すぐにいつもの空き地に出かけました。

 雨によって土が柔らかくなっているので、チャンスかもしれないと、当時はやっていた「落とし穴」作りをすぐにはじめました。深さ50cm、直径80cmくらいの穴を掘って、細い枝や植物の茎を渡し、紙などで覆い、最後に土を被せて出来上がりです。次は、誰を落とし穴に誘導して落とすかでした。この計画を知らない者で、罠に嵌められても怒って逆ギレしないなどの条件を考えてみました。

 結局罠に嵌めたくなるのは騙されやすくて怒らない、どちらかといえばおとなしくて弱そうな人間です。私たちと同じような・‥。どういうわけか、みんな黙り込んでしまいました。せっかく作ったものが試せなかったけど、計画を中止しました。細かい雨が降り始めていました。秋霖の夜、伝承かめ壷造り・本格芋焼酎「幸蔵」をやりながら、あの頃を想います。今よりも優しかったかもしれない、と。

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