サラダ記念日
No.521 / 2022年3月1日配信
日本には四季があり、一年を通じてその旬の味を味わえるという素敵な経験が誰にでもできます。春、無性にフレッシュな野菜が欲しくなりますが、冬眠から覚めたクマも最初に口にするのは、あの苦味が特徴の蕗のとうなどの山菜だとか。冬眠で溜まった体の毒素を体外に流し出すためだといわれますが、考えてみると、冬明けの人間の食行動もよく似たものかもしれません。
私は高血糖からさよならするための手段の一つとして、多くの野菜を食べるようになりました。野菜類の食べ方としては、やっぱり中心になるのは洗って切って手軽に食べられる「サラダ」です。子供の頃、若い頃はどうしてあんなに野菜が好きじゃなかったのだろうと自分でも首を傾げてしまいますが、今では好みも180度変化して、毎日朝から、サラダ、サラダ、サラダ。良い傾向です。
そんな頭に思い浮かんだのがあの懐かしい俵万智さんの「サラダ記念日」。ホコリを被った本棚の奥から引っ張り出してみました。私が結婚したての頃に出会った、若い女性のみずみずしい感情に溢れた現代短歌でした。サラダ記念日は7月6日ということですが、その意味が五七五・七七の中に収められています。読み返すと俳句ブームの中だからこそ、また違った意味で短歌が新鮮に感じます。
さらにページを捲り続けました。歌集の中にバブル経済が崩壊する前の昭和時代の何気ない青春の一コマ一コマが鮮やかに息づいています。純粋だったあの頃の自分と感情が重なりあって、妙に切なくなりました。不意の涙を我が家の女性群に悟られないように、そうっと伝承かめ壷造り・本格芋焼酎「幸蔵」とカップを取りに立ち上がりました。久しぶりに感情が揺れた夜、令和の3月、私のサラダ記念日。