コーヒー・タイム

No.528 / 2022年5月11日配信

 大学時代にジャズに狂っていたバイト先の調理人のおかげで、当時その隆盛を誇っていたジャズ喫茶なるものに、時々出入りしていました。オーケストラによるスイング・ジャズ、そしてモダンジャズの音が大きなスピーカーからズンズンと吐き出されていました。友人とまたは一人で、暗くてタバコの煙が充満する空間で、長髪の頭を揺らしながら破れたソファーに身体を沈めていました。

 コーヒー一杯で、たくさんのナンバーが聴けるので、レコードが買えない貧乏学生には大変ありがたかったものです。その当時、ハードボイルドな男たちのコーヒーに砂糖やミルクを入れない飲み方が、とても眩しく見えたものでした。ヒヨッコだった私はそんなハードさに憧れ、甘いコーヒーが嫌いじゃなかったのに、とても無理して苦いストレートコーヒーを飲んでいました。

 それが良かったのかどうか、現在もストレートコーヒーしか飲みません。砂糖が悪者になっている今ではそれも正解だったわけですが、それよりそのコーヒーの含有成分であるポリフェノールが注目されていることに意味があります。クロロゲン酸というポリフェノールに抗酸化作用があると言われ、身体が錆つき気味の私には本当に朗報でしたが、娘曰く、そんなの昔からみんな知ってるわよ。

 一人でペーパードリップのコーヒーを淹れる時間、心が安らかになります。そして最初の一口、頭を覆っているモヤモヤしたものが、スウッと霧散するような気がします。私にとってコーヒー・タイムは伝承かめ壷造り・本格芋焼酎「幸蔵」の時間と同じように大切な時間。ストレスで硬くなった心を揉みほぐして、柔軟性をもたらしてくれます。そういった意味でコーヒーと幸蔵、甲乙つけ難いものがあります。

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