甘夏

No.633 2025年4月11日配信

 家人の実家の裏庭に一本の大きな甘夏の樹があります。義理の母が枯れた草の有機肥料だけで育て、農薬にも無縁なので安心して食べられます。一本の樹にこれでもかというほど沢山の実が成り、訪れる小鳥たちにも、物価高の春の家計にも大いに役立っています。「甘夏」と言う名前なのに、春を迎える頃がピーク。だから春の我が家はビタミンC不足に陥ることもありません。

 私が子供時代に小袋を剥いて食べていた夏みかんは酸っぱくて、苛性ソーダ(水酸化ナトリウム)で酸性度を弱めて食べていた記憶があります。甘夏はこの酸っぱかった夏みかんからの突然変異種だそうです。1935年頃、大分県津久見市の川野さんという方が発見されたのだとか。実家の甘夏の樹も案外歴史モノかもしれませんね。戦後しばらくしてから植えられたと聞きました。

 家人と一緒にちぎって持って帰った甘夏みかんを、家人が皮を剥き、小袋から丁寧に身を取り出して皿に盛ってくれます。「よくやるよね。そんな面倒くさいことを」と言うと、こうしとけば食べるときに楽でしょと応えが返ってきました。それ、お婆さんの仕事だったよねと言うと「私はまだお婆さんではありませんから」とご機嫌斜めの方向に。ふぅ、危ない危ない。

 甘夏は柑橘類の中でもカロリーが低めで、ビタミンCはもちろんクエン酸やカリウムなどのミネラルもたっぷり。独特の苦味はフラボノイドの成分で抗酸化や抗炎症作用があるそうです。しかし健康の話もいいけど、やっぱり旨さの話。柑橘類の香りや酸味が案外、伝承かめ壷造り・本格芋焼酎「幸蔵」にも似合うことを発見。醤油を垂らして肴として、不思議ですが結構いけます。

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