魚図鑑
No.310 / 2016年5月1日配信
本棚を見ると、二十年近く前に買った「新・おさかな大図鑑」がイカツイ背中を見せています。当時はよくお世話になったものの、無料で便利なパソコン検索という時代の趨勢により、その横に並んでいる百科事典と同じ悲しい運命を辿っています。その頃は釣ってきた魚をよく図鑑で探し出し、食味の星の数(五つ星だととても美味い)を調べていたものです。
久しぶりに図鑑を開いてみると、ちょうど淡水魚の真鮒のページに。少年時代の記憶がじわっと蘇ってきます。小学生の頃、一時期、クリーク(農業用水のため池、用水路)がとても発達していた地方に住んでいました。私たちは子ども同士で、ミミズ、赤虫などを持って、よく鮒釣りに出かけたものです。もちろん、釣った鮒やハヤは食べるために持ち帰りました。
近所に大きな自衛隊の基地があり、「釣り大会」が実施されました。友人の父が自衛隊員だったため、私も参加できることに。初夏だったか、季節の記憶は曖昧なのですが、早朝の薄暗い中を自衛隊の幌付き大型トラックに乗り込み、釣り会場のクリークに。そして頑張った甲斐があって、なんと私は少年の部、大漁2位の栄誉に輝くことができました。
たくさん釣れた真鮒を母がさばいてくれ、飴炊きにしてくれました。私にとって、その味はまさに五つ星。大人になってその話をすると、多くの人が「淡水魚は泥臭くないか?食べられるのか?」と眉をひそめます。私はそんな経験を持てた自分の人生が大好きです。伝承かめ壷造り・本格芋焼酎「幸蔵」と巡り会えた幸せと同じように。