谷川俊太郎さん

No.648 2025年9月11日配信

 9月は敬老の日(第3月曜日)があるからか、尊敬していた諸先輩のことを想うことが多い月です。若い頃、谷川俊太郎さんのあの「二十億光年の孤独」に触れたときは、詩ってこんなものなの(?)と不思議な気がしたものです。詩に通じていなかった未熟な私でしたが、ただ、タイトルの「二十億光年の孤独」だけは「すごいな〜」とひれ伏すしかありませんでした。

 谷川俊太郎さんは単なる詩人ではなく、エッセイスト、脚本家、翻訳家、そして絵本制作にも力を発揮した「言葉のスーパーマン」だと思います。あのアニメ「鉄腕アトム」の主題歌も手掛けられたとは、後で知ってビックリ。昨年11月に92歳で亡くなられましたが、その年に開かれていた「谷川俊太郎 絵本★百貨展」に行っといて良かったと思っています。

 私の人生上(ちっぽけなコピーライター人生)で、最も心を打ったのが、彼の日本生命のCMで使用された「愛するひとのために」という文章でした。生命保険会社のコピーなのに「愛情をお金であながうことはできません」という厳しいフレーズにも驚きましたが、その後の「けれどお金に愛情をこめることができます/愛する人のためにお金が使われるのなら」で着地する見事さ。

 それは単なる日本生命の企業イメージの向上に役立っただけではなく、生命保険業界全体を救った言葉ではなかったでしょうか。谷川俊太郎さんの「真実の言葉の重み」が愛をもお金で買おうとした時代の重石になったと思います。軽々しく飾り立てた表現とは一線を画す素晴らしさ。伝承かめ壷造り・本格芋焼酎「幸蔵」の量産を追わない手作りの姿勢にシンクロしそうです。

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