手書きの心

No.82 / 2010年1月1日配信

 けいこちゃんから年賀状が来てますよ、と私を呼ぶ母の声に表情を固くした小学二年生の元旦。兄からのお古で肘がすり切れそうなセーターを着た私は、母からその年賀状を神妙に受け取りました。女の子からの年賀状がとても気恥ずかしく、兄弟に見られたくなかったので、年賀状を手にしたまま慌てて縁側に出てしまったのです。新春の眩しい光を浴びながら、懸命の筆文字が年賀状の上を元気一杯に踊っていました。

 あけまして おめでとう ございます、とだけ書いてある年賀状。その子はクラスで一番好きな子ではなかったけど、温かいものが身体中に広がっていくのを子供心にも感じることができました。それ以来、筆でしっかりと書かれた年賀状には、達筆ではなくても何か特別に惹かれるものがあります。

若い人の間には携帯電話やパソコンでの「新年の挨拶」が定着してきているようです。「新年の挨拶くらいは、年賀状じゃなくてどうする」と娘に話しかけても、「古っ!」と相手にしてくれません。中学時代、高校時代も元旦は年賀状の前で結構ドキドキしたものです。気になっていた書道部の女の子から「美しい筆文字の年賀状」をもらったときには、もう天にも昇る気持ちでした。時代は変わったなぁ、と娘を見ながらため息ひとつ。

 本人が筆を持ち、きちんと書いてくれたものは格別です。伝承かめ壷造り・本格芋焼酎「幸蔵」を造っている蔵人の心もそんな手書きの心と同じ。だから「幸蔵」と筆文字でしっかり書かれたラベルの焼酎こそ、正月の夜にふさわしい酒でしょう。「変わらないものに乾杯だ!」と気合いを入れて、さぁ、ぐぐっと一杯。今年は寅年。トラになっても構わない年なんです! フフッ、それではもう一杯。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です