カナギ

No.414 / 2019年3月11日配信

 ちょうど昨年のこの時期、どういう風の吹き回しか、以前職場で一緒だった友人から「いかなごのくぎ煮」が送ってきました。当時、独身寮で共に生活していたから、私の食べ物の嗜好もよくわかっていたはずで、「焼酎の肴に」ということでした。ちりめんじゃこよりもっと大きめの稚魚は甘辛く炊き上げられ、その姿は折れ曲がった釘のような形をしています。

 本名はいかなごという小魚を私たちの九州ではカナギと呼んでいますが、京都の山椒ちりめんのように繊細ではなく、砂糖、醤油、みりんなどではっきりとした味付けがされています。「わあ、熱々ご飯に美味しそうね」と我が家の女子たちは、贈ってくれた友人の「商品選択理由」などはそっちのけです。おいおい、それは酒の肴にするんだよ、悪いけど。

 なん年ぶりになるのか、私は久しぶりにお礼の電話をしました。懐かしいその声は元気そうで、昔、借りていた千円を返し忘れていたので、思い出してこの贈り物になったそうです。(もういいのに)そう言えば、友人と残業後に閉店前の小料理屋によく駆け込んだことを思い出します。そして、酒飲みながらのグチだけは吐かないないようにと、二人で心がけたものです。

 気持ちが真っ直ぐだった友人が贈ってくれた「折れ曲がったくぎ煮」で、伝承かめ壷造り・本格芋焼酎「幸蔵」をやりました。うまかった!その美味しさは屈折を何度も味わった私たちだからわかる、味の勲章だったのかもしれません。昔に貸した千円がこんな価値のあるものに変わりました。今年はもう送ってこないだろうから、自分で買ってみることにします。

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