枯 葉

No.368 / 2017年12月1日配信

 初冬の樹々が紅葉の名残をほんの一部だけ残しながら、多くが落葉を重ねてスリムな姿になっています。日照時間が減り、気温も下がってくると、「光合成」の作業効率が落ち、生命維持のために活動量を減らす必要が出てきます。熊のように冬眠が必要なのかもしれません。そういう意味で、落葉樹は冬を生き抜くために、あえて枝から葉を切り離すのでしょう。

毎年、紅葉を見逃さないようにと意識はしていますが、最近は現地までの渋滞を考えると腰が引けてしまいます。やっぱり私にはその根性が足りません。以前は紅葉狩りによく通っていた雷山千如寺の大カエデ(約樹齢400年)や雷山神社の大銀杏を今年も見逃しました。多少の無理を押してでも出かければ、ストレスも発散できたというのに。

 紅葉シーズンが終わり、舗道に散った赤黒い枯葉を、12月の冷たい北風が吹き溜まりに運びます。枯葉で思い出すのが、短編小説で有名だったオー・ヘンリーの「最後の一葉」。女性の命がかかった最後の一葉を散らさないようにと、自らの命を投げ打って「散らない」葉を描いた画家がとても格好良く、その懸命な行為がどれだけ美しかったことでしょうか。

 私は銀杏が残してくれた贈り物、美しい翡翠色のギンナンをつまみながら、伝承かめ壷造り・本格芋焼酎「幸蔵」タイムを始めます。もっちりした旨味と幸蔵の芋の風味が幸せのハーモニー。そうだ、ビル・エバンストリオの枯葉でも聴くか。生き抜くために葉を落とさなくてはならない紅葉樹を思うと、この我が身の温かい「幸蔵時間」が贅沢すぎて、申し訳ないくらいです。

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