掘りごたつ

No.300 / 2016年1月21日配信

 靴下を脱いで、右足のくるぶしの下を目を凝らして見てみると、うっすらと皮膚が引きつった痕が分かります。この時期、今ではほとんど抜け落ちてしまっている「ある失敗」の記憶がよみがえってきます。私が幼稚園に通っていた当時の話で、たいていの家庭の暖房環境は「電気こたつ」プラス「石油ストーブ」の時代でした。

 我が家のこたつは昔のままの掘りごたつで、畳部屋の中央部の四角い部分が掘り下げられていて、その壁はセメントで固められています。スペースの真ん中にはさらに火鉢が入るように穴が掘られていました。すきま風が冷たい季節のあいだ、毎朝、毎朝、母が朝食づくりと一緒に、土間で掘りごたつ用の練炭に火をつけていました。

 ある雪が降った寒い朝、早起きをした私は運動靴を半分履いたま七輪で足を炙っていました。七輪の中には練炭に火を移すための「豆炭」が赤く燃えていました。「危ないことしてはだめよ」という母の注意をないがしろにして、靴を燃え盛る豆炭に近づけすぎたため、煙のような湯気が上がりました。驚いて、あげていた足を降ろすとき七輪を踏み倒したのです。

 その結果、豆炭が靴の中に飛び込んでの大やけど。昔の暮らしは危険だらけだったものの、それらは大切な生きた教訓となり、未熟な人生を鍛えてくれました。「用心に怪我なしよ」と言った母の言葉が頭をよぎります。寒い夜の伝承かめ壷造り・本格芋焼酎「幸蔵」の一杯も、昔のあの掘りごたつでなら、もっと旨いだろうなぁ、きっと。

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