大根役者

No.294 / 2015年11月21日配信

 何年前の大河ドラマだったか、織田信長に仕える前(?)の貧しい木下藤吉郎が生の大根を齧るシーンが記憶に残っています。大根はそれよりずっと古い弥生時代に海外から伝わったとされる説もあり、日本の食文化の一端を長い間担ってきた大切な作物です。ビタミンCやジアスターゼという酵素を含んでいたことも、食べ続けられた大きな要素でしょう。

 旬は寒くなり始めてからというように、秋冬に出回る大根は甘みが増して美味しいものです。サンマやサバの塩焼きの皿に添えられている「薬味としての大根」から、「主役としての大根」へと格が上がる季節が訪れました。今年もまた、おでんの種として、またブリ大根のような煮付け料理として食卓を賑わしてくれるでしょう。

 新入社員時代、この季節によく通った食事処がありました。夜の居酒屋が本業ですが、昼食タイムだけ「おでん定食」など定食を出すために店を開けていました。選べる大きなおでん3個、小鉢、味噌汁、ご飯、漬物で五百円でお釣りがきました。その日も「まず大きい大根ね」と、カウンター越しのスタッフに注文の声をかけました。

 「しかし、お前の今朝の遅刻の言い訳はへたくそやったな」と同期入社の友人は玉子を頬張りながら私に言いました。「あれは大根役者以下や。課長も苦笑いしとったやないか」と笑われた30年前の私。伝承かめ壷造り・本格芋焼酎『幸蔵』で食べるおでんは、今でもやっぱりアツアツ大根から。「大根役者」は卒業出来たと思いますが、大根好きは変わりません。

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