茜色(あかねいろ)
No.288 / 2015年9月21日配信
竹笹や棒切れで道ばたの草を倒しながら家路を急ぐ光景。初秋の夕暮れ時、オレンジ色の大きな夕陽の前で、私たち子供の姿もシルエットになり風景の一部になります。どうしてあんなに夕陽って大きいんだろう?どうして秋の夕陽は落ちるのが速いのだろう?そんな帰り道、いつだってカラスが鳴いていたような怪しげな記憶も甦ります。
帰路、郊外の小川を渡って、稲穂の揺れるあぜ道を抜けると、やがて民家が現れます。それから私たちは「じゃあ、またね」と声を残しながら、一人ひとり別れて我が家に帰っていきました。「日が暮れる前には帰って来るのよ」と、母にいつも釘を刺されていても、自宅に帰り着くのはたいてい夕闇が広がってからでした。
焼いたサンマの香りが路地裏に漂っています。家の近くまで来ると、近所のおじいさんがお帰りと声をかけてくれます。私はいつだって「ただいま」と返答して良いものか迷いながら、「こんばんは」と出来るかぎり大きな声で挨拶をしました。陽が落ちたばかりの西空では、わずかに残る最後の茜色の雲が闇に溶けようとしています。
「今日は夕焼けだったから、明日も晴れだよね」と、母に「そうよ」の声をもらうために質問をします。「来週はいよいよ運動会。今年は完走しないとね」と母は言いました。前の年、短距離走で転けて脳震とうを起こして完走できなかったからです。今、マンションから見える西空は茜色。伝承かめ壷造り・本格芋焼酎『幸蔵』が美味しい日曜日の夕刻です。